─解放から数日後─
[使用人達が街へと帰る為に慌しく動く中、自分は一人教会へと赴いていた。
手には、あの日ゲルダから託された彼女の荷物と、日を遮る為の傘。
帽子を目深に被り、コートと手袋も着用しているその姿はあの日、自衛団に呼び出された時と同じ格好で。
けれどあの日と違うのは、足元で歩みを共にする繁縷姫の姿があるということ。
黒尽くめのこの姿は普段通りの格好ではあるけれど、事情を知る者がいれば、喪に服しているようにもみえたかもしれない。
場が解放されてから初めてきた教会は、どことなく寂しげだった。
それが、三人を失ったせいなのか、普段からなのか、日中に来たことの無かった自分には解らない。
いつも夜にしか来ない者が日中にやってきたのを見て、不思議に思ったのだろう司祭が首を傾げているのがみえて。
どうかしたのかという問いかけに、こくと頷いた。]
司祭様。
少しお時間よろしいでしょうか、お願いしたいことが。
[そう言うと、司祭は教会の中の一室へと通してくれて。
勧められた紅茶に口をつけてから、話を切り出した。]