─解放から数日後─
[教会を後にしたものの、まっすぐ屋敷には帰らなかった。
向かった先は、薬師の家…ゼルの母のいる、そこだった。
ゼルの死を受け入れることが辛くて、エステルにも会いにいけなくて。
解放されてから、此処に来たのもまた、初めてだった。]
……っぁ…、…
[家の前で、名を呼ぼうとしたが声が出せなくて。
微かに震えたまま動けずにいたら、足元にすりと擦り寄る温もりを感じた。]
…ミーレ、ちゃん…
[その名を呟くと、しゃがみこんで、白猫を抱き上げた。
その温かさが、勇気づけてくれたように震えが収まって。
扉を叩き、彼の母の元に向かった。]