痛かった。だからもうやめてね。[傷跡を隠すように、手のひらを握る。弟はぽつぽつとしゃべりはじめる。熱狂していた作曲家の話を聞けば、その女性に対して大変申し訳ないと心から思った。何せまわりが見えない弟だ、迷惑をかけたに違いない。人狼事件の話は、口が重かった。少しだけわかる、弟が迷っているのが。それでも先を促して、話を聞いた。思い出すのは一通の手紙。ただ一言、早めに家に帰りますというだけの。神様が信じられなくなったと言った弟に、私は言った]ばっかじゃないの