[言葉を交わせば交わすほど、掻き立てられる、不安。行かせてはならない、と。警鐘を鳴らしたのは、獣の本能か。だが、引き止める言葉は浮かばない。不安を掻き立てる笑みは、確かな決意の色を滲ませていたから。不退転。兄の口癖であるその言葉を、容易に思い起こさせる、頑なな色]兄貴……。「心配するな。 ……必ず、帰ってくる」[静かな言葉に。どう返すかと、思い、悩んで]……わかった。もし、帰って来なかったら……。「……来なかったら?」