>>1367
[夢の闇は寂しさに揺れて、終りの時間が近い事を知らせて来る。
青年は両の手で包んだオティーリエの曲げられた指に唇を落し、そっと離した。代わりに手を伸ばすのは彼女の体。名残を惜しむように抱きしめる]
えぇ、忘れません。
[抱きしめて囁くと、眼鏡の縁が軽く触れ合う音がした。
鎖の付いた腕輪の残る右手を上げて、眼鏡を外す。二つの鎖が触れてしゃらり瀟洒な響きが絡みつき、瞼を伏せるように顔を寄せた]
約束します――だから、いつか、また貴女に…
[――…逢わせて。
重ねた吐息の『願い』と銀の指輪を残し、青年の姿は消える]