―いつかの話・王都武器屋―
……遅すぎるの。
[イグナーツの店に戻ってきての開口一番がこれだった。
愁眉の寄り続けている顔を見るのは養い親としても本意ではない。
まして名前の出ていない対象も知人であれば尚のことである]
「だからといって追いかけるなよ」
したいけど、できないの。約束だから。
自分でも押さえられるようになるまでは、学院から離れないって。
[寂しそうな顔。昔なら抱きしめて慰めてやれたのに。
成長した娘にするのは問題があるだろうし、本人も嫌がるだろう。
誰かならまだそうできるのか。何であいつばかり。
こんな時だがムカッとしかけて、頭を掻いた]