[用意する荷物は然程多くは無い。
当面の目的地はあるものの、その先が見えているわけでもない旅だ。多くを持ったまま出来るものではなかった]
頼まれものは、これで全部と。
[事件が本格化する前、仕上げた小箱は渡せぬまま。
村人は今や完全に「遠い隣人」となってしまった。あの依頼撤回され、その箱は今、中に黒き十字架を抱えている]
これも何かの符丁だったのかね?
単なる偶然だとは思うけど。
[箱の蓋には翼広げた鳥。どこまでも、自由に]
…さよなら。
[語りかけたのは、小さな作り付けの棚。
父親が母親のために作った一番最初の、家族の証。
別れを告げて、待っている人の所へ]