─数年後─
[暖炉の前で、かりかりとペンを走らせる。
遠くからトタトタと聞こえる足音がこちらに近付いてくるのも気付かず、集中していたのだが。]
「おかあさん!」
ん?…あら、どうしたの?
[不意に背後からまわってきた小さな手と声に、顔をあげそちらを見た。
自分に抱きついて今にも泣きそうな少女と、その少し後ろでむすっと不機嫌そうな少年の顔を見比べ、首を傾げ問いかける。]
「聞いてよ、ペーターったらひどいんだよ!」
「何言ってんだよ、最初にいじわるしてきたのはリーザのほーだろ!?」
もう、二人とも…ちゃんとお話してちょうだい。
理由を教えてくれなきゃわからないわ。
「なぁに、お母さん。ちびちゃん達またケンカしてるの?」