[教会は初めて得た「家」だった。
ナータやクレムや弟妹達や図書室を通じての繋がりや。父と旅生活を失った後、生きる道を与えてくれた場所だった。
神に見捨てられたと思い、今またその家にも使い捨て見捨てられていたのだと知り。神もなにもかも、全てが虚ろにすぎなかったのかとすら思ってしまったのだけれど。
そうではないと、優しい言葉が教えてくれた。>>890]
救いを求め祈る人々の、心の中に。
[そっと胸を上から押さえる。
いつもつけていた十字架は今ここに下がっていないけれど。
何かが応え導いてくれるような、そんな錯覚を覚えた]
見えない、確かめられない、何処か。
[門前の小僧で憶えた聖句がいくつも脳裏を流れてゆく。
ああ、そうだった。形に縋るのはよくないことだ。
狂いかけていた感情がゆっくりと正され流れてゆく]