「……ああ、大丈夫だ。
さて、それではもう一つの目的を果たすとするか」
[白猫を撫でた後、こう言って青年は教会の方へと向かう。
司祭と話し、研究仲間が良く調べ物をしていたと言う書庫を見せてもらった後。
青年が願ったのは]
「……こちらに、ピアノがあるなら、弾かせていただきたいのですが」
[唐突な申し出に困惑する司祭に、青年は手にした楽譜を見せ]
「……彼が眠るこの地で。弾いておきたいのです」
[そう、告げた時の表情のためか、その言葉そのものに感じるものがあったのか。
いずれにせよ、司祭は青年を礼拝堂へと誘う。
大きくはないが、使い込まれたピアノ。
その鍵盤に指を下ろした青年は、形見となった楽譜に添い、旋律を織り成してゆく]