[なぞるように紡がれたライヒアルトの言葉一つ一つに小さく頷く。
人が神の領域に触れる事は叶わない。
触れられたとしたらそれが奇跡に他ならないのだろう。
けれどささやかな奇跡は気付かぬうちに降り注いでいたかも知れず。
目の前の彼と同じように自らの胸へと手を置く。
鏡写しのようにも見える仕草をした女は深緑を見詰め淡く微笑んだ]
最初から誰もいなければ、なんて、そんな哀しいことは言わないで。
私は――…ラーイと出会えて良かった。
あなたと出会えた奇跡に感謝してる。
[血に翻弄され因果な運命の歯車の一つとして組み込まれた。
“如何して”と何度繰り返し問うたか分からない。
自分を責め続けたのは彼も同じだったか。
それでも彼と出会った事は一度たりとも後悔した事はなく]
もう苦しまないで。
――…ラーイの苦しみの半分、私に負わせて。
[囁くように紡ぐ願いは届くか如何か**]