―いつか昔のこと―
[『世界を見てくる』>>1322、それが彼が、従兄のアーベルが残した短い文章だった]
なぁ、冗談だろ?
親父、アーベルは……戻ってくるんだよな?
[問い詰めるように、それは父親に言っても仕方のないことなのだが、
村の者の話によると、彼が村を出て行ったことは事実らしく、
そして数日、数週間、いくらたっても彼が帰ることはなかった]
アーベル……はぁ……。
[フロントでため息をつきながら、食堂に来た客が一人どうしたベッティちゃんと]
なんでもねぇよ、乙女の悩みに男が口出しすんじゃねぇよ。
[そう答える自分に笑いかけながら、本当はなんのことでなのか知っているのだろう。
従兄を待つ思いは募りに募り、いつか彼が帰った日、駆けつけ、先に出たのはきっと拳の方だった**]