―事件から数日後―
[事件の後。生きて戻って来たとは言え、傷を負った我が子に母は大いに嘆き、父は始終渋い顔をしていた。祖父は旧友たる自衛団長の死を悼みつつも、そんな二人を宥めるのに一役買ってくれたようだった。
そうして、傷の具合も落ち着き、村も常の平穏さを取り戻し始めた頃の事――]
……失礼、しました。
[深く一礼をして、屋敷の一室の扉から出て来た少年の頬は赤く、耐えるよう、眉をきつく寄せて唇を引き結んでいた。昔なら直ぐに泣いていただろうが、涙は浮かんでいない。
一仕事終えたとばかりに溜息を吐きだすとほぼ同時、柔らかな声が頭上から降って来た]
お爺さま。
[顔を上げ、まなこを瞬かせる孫の頭を撫でる祖父の手は、温かくて大きい。
まだ幼い少年は、緊張の解けた、はにかんだ笑みを浮かべた]