―春ごろ―
[春になる少し前、ユリアンの退院と入れ替わるように、父親が入院した。
全治半年と診断されたが、命があるだけマシだよね、とは父が床の上で発した言葉。
あまり反省してないんじゃなかろうか、とちらっと思ったが、母親はそれについて何も言わなかった。気は済んだ、という事だろうか。
うちに来た妹は、カヤと名乗った。顔を合わせると帽子を深く被りなおし、恥ずかしそうに俯く、大人しい子だった。
男の子のように短い髪をしていたが、目の色と髪の色は自分と同じ、赤と緑。
隣に並ぶと本当に兄弟に見えると、近所の人からは評判になった。同時に親父の浮気も評判になったわけだが。]