─事件から数日後─
フォル。
ううん、そんなに多くもないから、大丈夫。
[片付けの最中に家に訪れたフォルカーを出迎える。頬に赤みを宿した顔。どうしたの?と訊ねるも、フォルカーは何も言わずに笑うだけだった。痛々しげなそれに自分の手を添える。その後、告げられた言葉には一度縹色を瞬かせた]
───うん。
ボク達が外に出るには、まだ全然知識や経験が足りない。
その時が来るまで、ボクも学びながら準備を整えて行くよ。
[差し出された小指。微笑みながら、それに自分の小指を絡めて約束の証しとした]
[フォルカーが奮闘する間、イレーネは無人となった家の維持を手伝いながら、ローザの父のところで商売の手伝いをすることに。全ては自己満足の償いだったが、何もしないよりは良いと考えた。自衛団から渡されたエーリッヒの残したものは、ありがたく受け取り、刻が来た時のために使うことにし。ヘルミーネやエリザベートのところからもいくつか形見を分けて貰った。オトフリートのところからもレシピ集を貰い。酒場での手伝いもあってか、料理の腕を上げて行った]