『人狼ではなかった……ならば』
[投げようとした問いは、空中で体勢を整えるために途切れた。
それなりに深く刺さっていたはずの牙が作った傷から、風もないのに流れてくる花弁>>1604に空中で巻かれ]
クァッ。
[人とも獣ともつかぬ声の悲鳴が零れた。
最初の一片は瞼の上を浅く裂き、腕で目を庇う獣の腹側、より柔らかい場所を知っているかのように切り裂いてゆく。
黒の毛並みは緋を吸っても目立たないが、確実に傷は増えていった。小さな呟きは耳にこそ届けど反応する余裕もなく]
フゥッ!
[着地と共に気合を篭めて身を振るう。それが効いたか、実効時間は短かったか。ひらはらと花弁は地面に落ちてゆく。
その結果を確認することもなく、残る痛みは無視して再び駆け出し。青年の目前、今度は後脚で地を蹴り跳び上がった]