― 一年ほど後 ―
[季節は春の頃。一台の荷馬車が、村へとやってきた。
それに乗るのは中年の男性で、商人をやっているのだと言った]
「なに、村に来たのはちょいと知人からの頼まれものでもあったんでね。
ブリジット=ドルージュさんの自宅にいったりするひとはいないかい」
[ベンジャミンと名乗った男はそう尋ねて、缶をひとつ取り出した。
興味を持つ周りには、ただの茶葉だよなんて答えて]
「まぁ酷いもんだよなぁ。これを渡せと言うのは同業なんだが、こっちにゃ何の取り分もない。
奴の元相棒のお願いっていうもんだからなぁ。そうそう、ここに来るなって言われてるらしいから、アルはここには来れないな。
で、だ。これをもっていってくれるのは居るかい。それじゃあこうだ。もっていってくれたら、さて今から店開きだし、小瓶の蜂蜜でも駄賃にやろうじゃあないか――」
[やがてブリジットの家に届けられるだろう缶には、ゲルダが最初に出したあのハーブティーが入っている。貼られた紙には、大きく「一度目はお代は結構です」と書かれている。その他には、アルビンという名前と、連絡の取れるだろう村と宿の名前。それからただ一言、ありがとうの*文字*]