「おはよう。おまえ、名は覚えているかい?」[老婆が問う。男の定まっていなかった視線が、老婆を捉え止まった。]…覚えている。俺の名は―[呟いた名は『小百合』ではなく、その真名。それを聞いて満足気に頷いた七日生が手招くと、男は傍らに跪いた。]「今日から呉羽と名乗りなさい。その命が移り変わるその時まで…。」[男の額に手を当て告げると、ぼぅと、老婆の手が光った。まるで印を刻み込むように。]拝命賜りました。我が主、名を継ぐ方…名継様。[まだどこかぼんやりとした様子で、男はそう呟いた。]