………ぜ、る。[涙を拭う指の感触が離れて、次に触れたのは、彼の唇だった。ゆっくりと、届かぬ声を伝えるように。彼の顔を、じっと見つめて、その姿が見えなくなる、最後の一瞬まで、ずっと見つめて。そして、彼がいたそこは、光だけを残して、その姿を、消してしまった。今のは、夢だったのか。現実だったのかわからない。けれど…最期に、会いにきてくれたと、そう思うと。余計に、涙が止まらなかった。**]