『元人間の、魔物』
[緩慢な動作>>1695を眺めながら、聲として届く言葉を聞いた。
花とは何か。分からなかったが、気になったのはそこではなく。
複雑そうに、ポツリ、と囁く]
……そうか。
[肉声で付け加えられた言葉には、同じく肉声で返した。
狼姿の時には出しにくい声。人姿の時よりも明瞭さに欠けるが、風を震わせて消え行こうとする青年の元に運ばれる]
それはイヤなことを、思い出させたな。
そういう存在もあるのだと。覚えておこう。
[青年が花弁となり消えゆく中、ユラリと輪郭が崩れて、立ち上がるのは濃緑の瞳の男。
名も知らぬまま散った青年の残り香に手を伸ばし、掴むように握る。微かに漂うだけの香はもう、感情を不安定にはさせなかった]