[のんびりと話しながら海を見ていたら、不意に後ろからかけられた声にあら、と瞬いた。]
あぁ、いいのよ。
私が連れてきてって言ったんだから。
ほら、ヨアヒムはお母さんと戻りなさい。
おばあちゃんは、もう少しここで日向ぼっこしていくから。
[灯台の壁に寄りかかるように腰掛けて、岬から見える海を眺める。
あの日、この場所で大切なものを失った。
けれど、あの場に巻き込まれなければ、自分はこうしてはいなかったろう。
そう考えれば、あの時のことすらも、今は、懐かしく思える。
何故だろう、そんなことを思いながら、眠気を感じて。
ゆっくりと、目を閉じた。
暑いほどの日差しは、とても心地よくて。
そして、穏やかな眠りに落ちた。]