……何か、言ったっすか?
[獣の声、なれど何やら意志を持ったような声。悔しげな響きを感じ取れば、僅かに唇の端を持ち上げて]
びっくりしたっしょ?
さ、そのまま大人しく――
[しかし妖狐は、そのまま突っ込むほど単純ではなく、怯んで逃げるほど臆病でもなく。
ただ、顔以外の身体が傷つくを顧みぬ機転と勇気で持って、こちらへ突撃をかけた]
しまっ――
[破片へより強く念を掛ける。しかし幾らそれらが深く突き刺さろうと、妖狐を止めるには至らぬ様子。
こうなってはもはや、少しでも衝撃を和らげるべく、後ろへ飛ぶしかない。
しかし――]
ぐ、はっ!
[殺しきれぬ勢いを腹部へ受けて。
後ろへ吹っ飛び床を滑る少女の口に、酸っぱいものがこみ上げていた]