[唐突な言葉に、思わず呆けた声を上げる。
『失して』いるが、『消滅』には至らない。
それが何を示すのかは、それでも、おぼろに理解できて]
まだ……なくなって、ない?
「血によりて継がれし力は、生ける限りそうそう滅する事はない。
……お前は生命と引き換えに失した、と思うているようだが。もう一度、『辿って』みてはどうかな?」
[呆然ともらした呟きに、男はさらりとこう返し、それから、桜を見上げた]
「彼の娘は未だ、輪転への昇華を拒んでいる。
……いずれまた、此度のような事態が起きぬとは言えんだろう。
だが、それを起こさぬよに、起きてしまった時に正しく処すために。
封じの盟を担いし櫻木と葛木は血と力を正しく継いで行かねばならぬ」
[ここで言葉は途切れ、男の視線は桜からこちらへ]
「……でなければ、彼の娘は再び魔に堕ち……次は、戻るも叶わぬだろうな。
そうなれば、引き起こされるは最悪のみ、だ」