[息が詰まる。声など出ない。聞こえない。ただ赤の中、にらみあげる。ころしてやる口唇からは零れない声。こころの中でそれが回る。くるくると、クルクルと。だがそれも、貫かれては動きを止めて。こぽっと、口唇から赤の泡が吐き出される。口唇からは意味にならぬ音が、苦しげなうめきにも喘ぎにも聞こえるような声が零れて、消える。光など、見えなかった。――そんなもの、彼が死んだ日から、一度も見ていなかった。見開かれた目は硝子のように、それを弾くばかり]