―村を離れて―
[雑貨屋で、最後に娘と交わした言葉は何だったか。
それは胸の奥に沈めて、今はただ静かに山道を下る。
途中草に沈めば、身を変え獣になって村を離れた。
人と獣とを行き来しながら、少しずつ遠くへと村を離れていくも
何処へ行けばいいか、どうすればいいのか
そんな事はまるで考えていなくて。
今更ながら、自分の無知さかげんに呆れていた。
どれくらいの日数経ったか。
人の姿で前へ前へと急くようにあるいていたから
いつかのように、足元に不注意して躓いた。
いつも助けてくれた手はもういないのに―――]