きゃ……
[ぐらと身体が傾ぎ、お腹を庇わなければと無理に体を曲げた所で
前から来た人に慌てて体を支えられた。]
す、すみません……
[身重なのは見て取れたのか、支えてくれた人は大丈夫かと心配そうに問いかける。
どこかで聞いたことのある声に、謝罪と、礼を言おうと顔を上げれば
その人の、深い森の瞳に吸い込まれた。
数泊の間の後、瑠璃は大きく見開かれる。]
…………リヒト?
[口にした後でしまったと、口元を抑えるのはそれが失せた人の真名だったから。
とはいえ何も知らない人には、ただの名前だから、隠す必要はないのだが。
それでも、視線は緑色から外せず、脳裏に疑問符が積まれていく。]