[旅装束の男――ルークスは村へ向かう道を辿る。
その最中、膨らんだ腹を庇い歩く女の姿が見えた。
傾ぐ身体に思わず両の手を差し出し支える。
少しだけ懐かしいような、そんな匂いが腕に抱く女から香る]
大丈夫か……?
[名も知らぬ通りすがりの女。
気遣うように向けた眸に見開かれた瑠璃が映り込む]
――…え。
[女は自分を見てリヒトと紡いだ。
其れは双子の弟の名であり死んだはずの者の名。
対が居ると知る者は両親と自分以外にない。
だから、何故その名を呼ぶのかが分からず
人の良さそうなその男の貌には困惑の色が浮かんだ。
見知らぬ人に誰かに間違われた、困惑を演じる。
深緑の奥に見定めるような冷たさを隠して――]