[問うような確かめるような声が聞こえる。
銀灰の髪が支える手に触れ微かなくすぐったさを覚えた]
そんなにリヒトって奴に似てるのか?
[彼女から敵意などは感じられない。
腕の中の彼女に小さくそう問い掛ける。
会った事のない弟を知るかも知れぬ女。
見開かれた眸が潤み大粒の涙がぽろと零れれば
如何していいか分からないといった風に視線を伏せて
寄せられる柳眉はリヒトの仕草とも似て――]
――……。
[紡ぐべき名を知らぬ女の目許に指先を宛がう。
労るような淡い仕草で、女の涙を指の腹で拭った。
泣くな、とは言わない。
涙を堪える辛さを知っていたから]