[泣かれる事に旅人は途惑いを覚える。
彼女を泣かせた事を誰かに責められているような気がして
銀灰の彼女をあやしながらもそわりとした様子]
泣かせて悪かったな。
[誰にとも知れず紡がれる言葉。
直ぐに立ち去れずにいたのは女から懐かしい匂いがしたから。
彼女がリヒトの名を紡ぎ感情を零したから。
――己の聲が届き彼女の聲が返った]
『――…聞こえちまうか。なるほどな。
俺はリヒトの双子の兄でルークスと言う』
[聲が届いた事で彼女が泣いた理由も薄々分かる。
彼女との出会いは弟の導きかも知れぬと思えば
銀灰映す深緑の眸には少しだけ切なさが灯る]