『アイツは知らなかっただろうな。
俺も最近知って、……弟に逢いに来たが、遅かったらしい』
[遅かったと紡ぐ理由は彼女なら理解できよう。
名乗られる名は無論聞き覚えのないもの。
銀灰の奥に見えるはこれから行くはずだった村の特産品を思わせる]
『幼馴染で相棒――…』
[彼女は伴侶とは言わなかった。
だから腹の子は違うのだろうと推測できた]
『これから一人で何処に行くンだ?
――…あいつの話を聞かせて呉れるなら
其れまでの間、旅の連れになってやるよ』
[何もない所で転びかけ危なっかしさを見せるグラォシルヴの瑠璃。
其れを見詰めながら改めて手を差し伸べる。
双子の弟が惹かれたように兄もまた彼女に惹かれてゆくかもしれず**]