─ 放浪の一幕 ─
[蒼から色違え、紅に染まった瞳に映る世界は紅い。
例え天穹にかかる月が真白でも、紅が捉えるそれは常に異なるいろを纏っている]
……騒がしい……な。
[異眸それぞれが捉える、異なる色の同じ月を見上げつつ、右腕を掴む。
纏いつく、茨の蔦さながらの銀細工の埋められた腕。
己が内の蒼の獣を縛するための細工は、静かな光を放っているが。
それが縛するものは、酷く疼いてもいるようで]
……状況が揃ってるってんでもないだろうが……ったく……。
[ぼやくように呟いた後、一つ、息を吐いて。
それから、気を鎮めるべく、歌を紡ぐ。
他者の声のない──あってはならない、紅の世界にのみ、響くコエで]