[水球は鎌鼬の形状に沿うように。
けれど総ては覆わず、4点を集中的に打ち砕かんと五重に整列する]
[風刃と水球が打ち合った瞬間、ぱしゃんと音が響く。
一弾では風は打ち消せず、けれどその気は僅かに乱れる。
整列させたとは云え、その位置はズレが無い訳ではない。
風刃に触れる位置も、タイミングも。僅かに、大幅に、異なっている。
故に刃に歪な揺らぎを齎し、そうして]
[風を散らし貫く事が叶ったのは20を超える内のたったの2つ。
それも幾分か力を失ってはいるが、それこそ野球の硬球が持つ程度の硬度を持って蝶を襲おうか]
――ッ、!
[けれど、鎌鼬の総てを覆わなかったが為に。
打ち消し切れなかった刃が自身を切り裂く。
それは頬に腕に脚に。浅かれど血を溢れさせる程の傷を齎して]