─ 放浪の一幕 ─『……言うまでもなかったか』[ぽつりとだけ返ったコエと、言葉にならない肯定。『場』というものを知り、そこの心を残したことがなければ生まれないだろう空気に、覚えず肩の力が抜けた。同じように生き延びたものになど、会ったことはなかった。今は亡き先達以外で話した事があるものは、何も知らない無垢なる者達ばかりだったから]『?』[告げられなければ、風の名とて知りようはなく。だがより気になった方を問としてコエに紡いだ]