[長い時間をかけて辿り着いた高地の村。
懐かしき場所。
訪れた者はまず宿屋へと向かうのに、青年は別へと歩み行く。
青年の前には雑貨屋の扉。
静かに開くと、きぃ、と扉が悲鳴を上げた]
────ゲルダ、迎えに来たよ。
[柔らかな笑みと共に告げる言葉。
毎年告げるものとは異なる言葉に、彼女はどんな表情をしただろうか。
彼女を迎えるために様々な準備をした。
父の説得は勿論のこと、何かと口を出して来る兄達を言い負かしたり、世間体ばかり気にする親類を説き伏せたり。
それらを済ませて、後は彼女を連れて来るだけとなっている。
勿論、無理強いはせず、彼女が村を離れるのを決めるまで待つつもりで居るのだが]