『そうか。そういえば』
[名乗りはしてなかったかと、金の眸を瞬いた]
『ヴィント。よく似合っている。
私は、メルト。ここではそう呼ばれていた』
[二色の異眸に向けられていた金は、一度瞼の裏に消えて。
再び開いた時には深緑へと変わっていた]
普段は、リチャードと名乗っているよ。
[コエを切り、声で伝えたのはもう一つの名。
望まぬ再会となりそうならば避けてくれと、そんな思いもどこかにあったか。宿帳でも捜せば、リチャード=ロックウェルというフルネームが時に見つかることだろう]
『では、な』
[ゆるりと踵を返し、蒼い風に背を向け再び歩き出した**]