◆ENDRP
[ヘルムートが、暗闇と静寂が満たす部屋を出るのは一番最後だ。
ダーヴィッドが其処に居なくとも、アーベルとカイン、他にも多くのピューリトゥーイ達が眠るその建物から立ち去り難く感じるのかもしれない。
闇の世界へ引き込まれずに済むのは、並んで歩く恋人達。すぐ近くに手を繋いで歩くベアトリーチェとノーラの姿が見えるから。すぐ前を歩くブリジットの、心許なく見える足取りを見守らなくてはと感じるから。
──生きているから。
けれども、バンドを剥いだ感触、冷たい石像に触れた感触。それらをまだ逃がしたくは無いと、掌を握りしめる。
明るい空。光に隠れて見えない星が遠くて瞬く。
52年、半世紀を過ぎても変わらない澄んだブルー、横切って飛ぶ、白い鳥の姿を見る。暗闇から出たばかりの目に、世界はただ*目映い*。]