[呉羽は暖かな木漏れ日の樹の下で、ウォールナットのロッキングチェアに深く腰かけた老婆の背後に、静かに控えていた。
男にとって無言は苦痛ではなく。退屈な時間は望む所で。あるいみ平和な時をじっと、過ごす。
老婆の手には、未だ花咲く桜の小枝。
それを眺めながら、一人呟く。]
「…さて、御仁はまた訪ねて行ったんだろうねぇ。
相変わらず世話焼きな事で。
でも…まぁ、私も人の事は言えないかしら。」
[ちらと見るのは傍らに控える呉羽。
彼は何人目になっただろうかとふと思う。数える事は止めてしまって久しい。
今度は小百合と違って大人しい性格らしく、言われた事を黙々とこなす。これはこれで便利だが、少し物足りないと感じるのは、それだけ小百合に慣れてしまったからだろうか。]