[落ちていたそれを見つけたのは、ほんの偶然だった。それは己をかえと云い、狐は躊躇いもなく短刀を取った。翼を傷つけるのに躊躇いがどこにもなかったといえば嘘になるが、しかし狐の下に隠れた顔は決して誰かに見えることもなく、それを行ったときの狐の心境を知るものは決して他にはありえなかった。]いいだろう。[負っていた怪我を癒す。負わせた傷をのぞいて。このような状況になるのに、興味があった。狐は、男を“かった”。しかし何がおきるわけでもなく、もう幾年か。]