[きっかけは何だったか。]――いっそ、すべてをなくしてやろうか。[飽いたのか、やはり声は冷たく。狐の面はない白いかおが、くれないの口唇が笑みをきざんだ。相手のことばなど聞くわけもなく、狐の背に白はひろがり、――そして狐の手から白は零れ落ちる。ゆるり。傷を癒すちからが、こぼれる。すべての 傷をいやすほどの 力に満ちたひかり。]