――ハ、
[そうだ、痛みがないのだった。
打ち砕き、打ち砕かれ、それでも止まらぬ姿を見て、思い出す。
理解して居るのに忘れてしまって居た事実に、吐き捨てるような音を零して]
[間合いの一歩外で繰り出された手に、それでも咄嗟に左へ顔を逸らす。
ジッ、と焦げ付く音と、匂い]
……そんなもの、あったっけ?
[零れる苦笑いと共に黒く染まった髪に水を纏う。
熱を冷ますのは数瞬限り、すぐに解けて]
[その水が次いで集まったのは、右手。
40cmほどの片刃の直刀を生み出せば一気に胴を狙って振り薙ぐ。
ピヌティと呼ばれる剣は軽く、その速度も、速く]