>>2740[逃げるを決めたは、その年の実りは不作であったと聞きしゆえか。身の内に溜まる澱は寿命を大きく削り、やがて屍と成りてこの国を沈めんと容易に知れるもあろうか][私は後脚を人へと変え、繋がれし枷を砕く。骨に達せし棘を抱き、砕けし小さな針を身の内に巡らしまま、私は麒麟が歌を――五音を高らかに啼いた][私を捕らえんが為に同じく捕らえられし人の子を咥え逃げ、人里へと返して。残る力で逃げたは人の入らぬ森。水辺にて力尽きた私を、救って下さったのは―――]