[藤色の竜を送りし後、私が向かったは時の竜の部屋であった。
その顔を眺めていたセレスが、立ち上がって駆け寄るを受け止め。
私は、眠るその顔が見えるよう側の床へと座り込む。
彼の仔は再び枕元で丸くなり、心配そうに小さく鳴こうか]
……ええ、そうよの…心配せずにはおられぬ。
なれど今はお休みになられておるゆえ、静かにの…。
それが一番、時の竜が為になる……そう、いい仔よの…。
[私は彼の仔の頭を優しく撫で、小さな声で五音を歌う。
麒麟が安らぎの歌――心鎮めし、眠りの歌を]
[最終決戦という矢面に正面から立たれし彼の竜の怪我は、命魔殿の「ドイツもコイツも馬鹿」といった台詞に現されし如く、酷いものであった]
『どうして――平気な顔をして立っておられたのか…』
[彼の時を想い、私は知らず重い息を零す。
矢面に立つが彼の竜の性分なれば、止めるが私の性分と…諌めるを心に決めて。
眠りに落ちた彼の仔を優しく撫でた指を、私はそのまま――昏々と眠る竜の手に重ねる。
二つの腕輪が触れ合い、小さな共鳴の波紋が*揺らいで消えた*]