―100年先の話し―
この年はじめての雪が降る日でした。急激に冷え込んで、雪は止むことを忘れてしまったように、ただ深々と降り続けていました。森はそれをただ受け入れるためにそこにあって、たくさん重ねられた木の葉の下では、たくさんの虫たちが長い眠りについていました。
純白の雪に、小さなあしあとが残るのを、誰か認められたでしょうか。
果たして、一本の樹の下に、鮮やかな群青色がありました。少しそこの雪は固かったでしょうか。でも、――そう。そこには、何もいませんでした。
雪はただ降り、使い古された群青色の布を隠していきます。それを止める人はどこにもいません。
やがてそれが隠れてしまう頃。
長い雪がやみました。
樹の上で小鳥が啼いています。水の中で魚が躍ります。やがて春が訪れて、その森は賑やかさを取り戻すでしょう。
たった一つ、青い布だけを取り残して……。