[別に魔人は優しいわけではない、はずです。
レイスを助けたという時でさえ、こんな様子だったのですから。]
―過去―
・・・・・・セイレーン、か
随分と弱っているようだな
[人間に無理やりつけた翼と、未だ血を流しているその背を見比べて魔人は一人ごちました。
刃を作っては形を失った血が血溜まりをいくつも作っています。]
――どうせ死ぬなら、海へ還れ
[そう呟いて捕らえた鎖を砕き連れ去ったのは、ただの気まぐれ。
意識が朦朧としている相手に名と故郷を聞いたのも、どうせなら仲間に見送られたいだろうと考えただけでした。
問われた名を答えたのも全て―――]