[紙袋を携えて、ブリジットとの待ち合わせ場所に向かう。程なくして、すぐ後ろの路地裏に待ち人の気配が現れた。
如何にも人通りの少ない裏通り。一人でそういった場所を通ることは危険だから止めるようにと、何度言ったか知れない。恐らくその路地が、いまミハエルの立っている場所への近道だったのだろう。ミハエルは溜息を吐いた。
罰として、というより見せしめに、マフィンを一つ、目の前で食ってしまおうか。ブリジットの気配が唐突に断絶するまで、ミハエルはそんな事を考えていた。
それほどに唐突な消失だった。
ミハエルとて、呑気な性格の持ち主では無い。何らか襲撃者が身近に潜んでいて気付かない程、世の中が平和だとも思っては居ない。それでも、そういった兆候は全く感じ取って居なかった。先ず襲撃者の意図が分からない。
そういった、状況判断を全て後回しにし、襲撃者がまだ近くへ潜んでいるであろうといった危険をも顧みず、ミハエルは路地裏へ駆け込む。]
ブリジット?!