[妖女さま、妖女さま。 此度は誰そお呼びになる。此度は誰そ招かるる。 笑ひ声に混ざる言の葉は天狗にしか聞こゆまじ。]その名で呼ぶのはおよしな、好かぬと幾度も云うている。己等の一存にては決められぬ、月白の神巫の云いつけだ。まだ時は移ろうわぬ、そう焦る事もあるまいて。[紫黒の御方がお怒りになった、お怒りになった。 童子らきゃらきゃら笑ひつつ廊下を抜けてゆく。]