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[従魔と名乗る獣より投げられし、光。
そこに込められた、『機鋼』の属を司りし竜王の言葉に。
漆黒の龍は嘆息するように息を吐く]
……わかった。
他者に任せるには、いささか複雑な事象……俺が、機鋼界まで出向こう。
[静かな言葉に、ありがとう、と頷く獣に。
距離を取るように、と告げて。
漆黒の龍は身を震わせる。
ゆらり。
何もない、ただ、虚ろなる空間が、揺れた]
無限なる虚に眠りし時空の龍。
いく度かの刻の巡りを経て。
再び、時の刻まれる世界へと。
白き翼は界を超え。
精霊たちの地へと赴く──
─機鋼界中央塔・管制室─
……なるほど、話は大体わかりました。
[薄暗い空間に、様々な光が舞い散る中央塔・管制室。
機鋼界の中核たるその場所で、久しぶりに取る人の姿で相対するのは機鋼王クロム。
訪れてすぐ、気難しげな機精により案内され、対面したクロムから聞かされた話は、先にセレスティンから受け取った機竜王の伝言のそれとほぼ同じものだった]
ようするに、俺に新たに生まれる機鋼竜の子守をしてくれ、と。
要約すれば、そういうことですね?
[どこか疲れたように、でも冗談めかして問えば、クロムはそんな所だな、と言って笑った。
その返事に彼は大げさなため息を返し、そんな二人の様子を機精は表情を変える事無く、今は金髪の少年の姿を取る従魔はどこか不思議そうに見つめていた]
……まったく。
とはいえ、俺としても無視はできないしね……色々な意味で。
できるだけの事はさせてもらいますよ、機鋼王殿。
……で、肝心の機鋼竜は、いつ頃動けるように?
[表情と声音を引き締めて問えば、クロムはありがとう、という言葉の後に、翼が完成してから、と問いに答える。
参考になるやも知れぬから、後で翼を見せていだきたい、との申し出には、はいはい、と軽く頷いて]
とにかく、今の内は俺にやる事はない、と。
まあ、正直な所、ずっと虚で眠っていて、この姿は久しぶりなので。
本格的に働かなきゃならなくなるまで、身体を慣らさせてもらいますか。
「もてなしの準備は整えてある。
ここにおられる間は、この中央塔以外の区画で自由に過ごして構わない。
この界は、【界の狭間】を模しつつ、あちらにはないものもあるからな。飽きはせぬだろう」
そうか。
じゃあ、楽しみにさせてもらいましょう。
[クロムの言葉ににこりと笑って頷くのと。
傍らのセレスティンがはっとしたように身を震わせるのとは、どちらが先だったろうか。
一歩遅れて、左の肩に止まる相棒──白梟のヴィンターがばさり、と翼を羽ばたかせる]
……どうした……っ!?
[問いは、途中で途切れる。
異変の気配──それが、感じられたから]
不意の力の揺らぎ。
それを感じ取った者は、果たしてどれほどいたろうか。
機鋼の界、それ自体を揺るがして。
力あるものへと投げられし、力。
訴えるよに、縋るよに。
それでいて、有無を言わせる事なきそれが行おうとしているのは──
─人間界・田舎町のとある宿─
「……っ!?」
大きな──大きすぎる、力の揺らぎ。
おおよそ『均衡』とはかけ離れたその波動を、彼が感知するのはある種の必然か。
遠くて近いその場所から感じた、波動。
それが力の均衡を大きく乱しつつある事は、容易に察せられた。
「……ハーヴェイ?」
突然息を飲んで虚空を見上げる様子を訝るように、名が呼ばれる。
それに答える事無く力の流れを辿った彼──影輝の精霊王は一つ、息を吐いた。
「……機鋼の精霊界で、何か、起きている。いや……起きかけて、いる?」
続いて零れ落ちたのは、こんな呟き。
「ここからじゃ、どうもはっきりしないな……一度、戻るべきか……」
「戻る……精霊界に?」
「ああ」
頷いて、かけていた眼鏡を外す。
碧から貴紫への、色彩の変化。
「何事もなければいいが……こういう時は、大抵何か起きるもんだし……な」
どこか冗談めかして言いつつも、その表情の真剣さは、事の重大さを容易に物語る。
『機鋼界では、確か今……備えておくべき……か?』
声なき声にて呟きつつ。
力ある王はあるべき場へと。
やがて異変に気づいたなら。
界を離れし諸王もそれぞれ場へと向かおうか。
十五番目の属の行く末、思いつつ。
─機鋼界中央塔・管制室─
「ギュンター、状況は」
「……界の境界に対する、関与の痕跡を探知。
現在精査中ですが、界の外部よりの立ち入りが複数感知されております」
機精の報告に、機鋼王は表情に僅かな険しさを滲ませる。
「なに……?
ギュンター、お前は界の見回りと、それから機精たちに過去の行動情報を提出させ、内容を精査せよ。
私は、念のため彼の『仔』の様子を見てくる」
御意に、と頷いて姿を消す機精を見送ると、機鋼王の視線は時空竜へと向けられる。
「……貴殿も、感じられたかと思うが……どうやら、覚えなき客人が来ているらしい。
もし、そのような迷い子を見かけたら、東部エリアの屋敷に案内していただきたい。貴殿も、滞在中はそちらで寛いでいてくれ」
[交わされる機鋼の王と精霊の言葉。
その内容に、翠と紫は険しさを帯びて]
……何やら、慌しいご様子で……。
わかった、もし見かけたら集めときましょう。
俺の方でも、探してはみる。
[客人の手を煩わせては、との言葉には、くく、と笑って]
なに、だいぶ長く寝てたんで、色々と勘が鈍ってる可能性もありますんで。
少し、エターナル・ロンドに力を通しておきたいってだけですから、お気遣いなく?
[冗談めかした口調でこう言うと、まだ落ち着かない白梟を宥め、それから、困惑した様子のセレスティンを振り返る]
……さて、それじゃ俺は行くけど。
君も一緒に来るかい?
─中央塔・外周通路─
[頷いたセレスティンを伴い、塔を取り巻く外周通路へ。
やや表情を引き締めた後、右手の腕輪に意識を集中する。
じゃらり、という音が響き、精霊鋼に良く似た銀の鎖が腕輪から落ち、次いで、金属音を響かせつつ、空間に陣を展開した]
エターナル・ロンド……力を、追え。
[外部より立ち入った者がある、と彼らは言っていた。
ならば、その者たちはこの地では異質な力の持ち主である、と言えるだろう。
機鋼の属を帯びた者は、世界の成長の度合いにもよるが、さほど多くはない。
界の力に紛れる事は稀だろう、と思いつつ]
……にしても。
起き抜けにこんな騒ぎにぶち当たるとは……やれやれ。
[思わず口をついたのは、こんな呟き]
少年 ティルがいたような気がしたが、気のせいだったようだ……(少年 ティルは村を出ました)
シスター ナターリエ が参加しました。
シスター ナターリエは、共鳴者 を希望しました(他の人には見えません)。
―西部エリア北西部:針葉樹の森―
[指先が痺れる感覚に、私(わたくし)は重い瞼を開ける。
視界に入る真白の羽は、横たわる身体に音もなく舞い降り続ける]
ゆ、き……何ゆえ…に…?
[呟きは天からの冷たき羽――雪に吸い込まれ、答える者はない。
凍える身体を真白の褥から起こし、私は淡い菫色の瞳をどこか見知らぬ森へと向けた]
学生 リディ が参加しました。
学生 リディは、囁き狂人 を希望しました(他の人には見えません)。
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