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……三人居る……。
本当に、何なのよ、ここは。
[茶の男の言葉は聞こえていない。ぽつりと呟いたこちらの言葉も、果たして向こうに聞こえたかどうか]
[こちらのことが知られても、直ぐに彼らの傍へと向かう気は起きず。警戒の色は消えない]
ん……ああ。
[先に行く、という声に返すのは、気のない声。
黒の門を潜る黒を見送り、蒼氷は再び、樹の陰へと向いた]
[少女の呟きは風に散らされたか、少なくともこちらには届かず。
向けられる警戒の色に、軽く肩を竦める]
やれ、やれ。
ここで突っ立ってても埒は開かんかねぇ。
この中に事情通がいる事を期待して行った方が、時間は無駄にならんか。
あ。
[黒の門の奥、扉が開くのが見え思わず声が漏れた。その奥に揺らめく小さな焔。それを持つ者の顔までは見えなかったが、焔の位置的に誰か居るのは見て取れた]
他にも、居るってこと?
あの人達皆、ここの人達なのかしら。
……ここが何なのか、分かるかしら。
[自分が何故この地に居るのか。誰かが連れて来たのだとしたら、何故城があるのに森に置き去りにされていたのか。もしここに連れて来た張本人が居るのだとしたら、問い詰めることが出来るかも知れない]
…よしっ。
[意を決すると、樹の蔭から出て人が居る方へと駆け出した]
ああ。
ここで、突っ立ってるよりはマシだろうよ。
[尋ねる男に頷き、門の内へと踏み込む]
[先に進めば、焔揺れる入り口。
そこに立つのは、先に行った赤髪の男と、燭台を手にした男]
[先に行った赤髪と、燭台の男は何か言葉を交わしていたか。
そちらには特別の興味はなかった。
恐らく、彼が問いを投げていたとしてもそれは自分の問いたい事と、さして変わらぬだろうと思っていたから]
……あんたが、ここの主……か?
[問いに返るのは、自分は『番人』である、との答え]
『番人』……?
ここは、一体何処……いや、なんなんだ?
[微か、苛立ちを交えた問い。
それへの答えはなく、ただ、休息が必要ならば部屋が使える、との説明がなされたのみ]
[二人の背中ごし、揺れる蝋燭の炎に照らし出された男性の顔がぼんやりと、薄闇のなか浮かび上がっているのが見えた。
既に若くもなく、まだ年老いてもいないその顔に、彼は確かに見覚えがあった。]
わ、ちょっと、待って。
[門をくぐって行く者達を追うようにして自分も門の内側へと入る。赤と、青と、茶の髪をした青年達。その先の扉の内側に居るのは燭台を持つ壮年の男性。駆けたことで少し息を上げながら、先に居た青年達の後に並ぶようにし、交わされる言葉を聞く]
[幾つかの問いと答えの応酬。
しかし、得られたのはこの城の設備を使いたければ使えばいい、という事実のみ]
……やれ、やれ。
肝心の事にはだんまり、か……。
[吐き捨てるよな呟き。
苛立ちを帯びた蒼氷が、いつの間にか後ろに続いていた者たちに向けられる]
どうやら、衣食住の心配はないようだぜ。
……それ以外は、話す気がないのか、本当に知らんのか、見当もつかんがね。
[なされる会話は自分が訊ねたかったことと同義で。それはつまり彼らが自分と同じ境遇であることを意味する]
[自らを『番人』と名乗る男性に視線を向ける。聞きたかった問いの答えは貰えないらしく、眉根に皺が寄った]
…何よそれ。
だったら、誰がここに連れて来たって言うのよ。
[茶の青年が言葉を紡ぐ。番人より聞いた、この城の部屋を使っても良いと言う話。それ以外に関してはほぼ分からないと言うこと]
………そのうち分かるって、ことかしら。
[漏れた言葉はまるで独り言のよう]
[何故か今はもう一つの問いは口に出さない方が良いように感じた。
――あなたは私をご存知ですか。私はここに来たことがあるのですか。]
さて、それこそ俺が聞きたい所だ。
[眉根に皺寄せる少女の言葉に肩を竦め、おどけたような口調で言う]
……ならない、というより、他にどうしようもないんじゃないか?
俺としては、あまり、嬉しくはないんだが。
[男の発した問いには、嘆息を交えてこんな呟きを漏らす]
……ここは。
ここに満ちる、あの花は。
どこか、疎ましい……。
離れられるなら、離れたい……。
[心の奥底、零れ落ちるのは、今は叶わぬであろう、願い]
……そうですか。
[「嬉しくはない」という青年の言葉を少し考えるように頭を傾けた。]
では、しばらくはここで共に過ごすことになりそうですね。
[茶の青年の様子に出るのは溜息]
…皆が疑問に思うことは答えてくれない、と。
ここに居れば教えてもらえる時が来るのかしら。
森で野宿とかじゃないだけ、マシかも知れないけど。
この状況で嬉しいと思う人が居たら、頭のネジがどっか飛んでるわ。
[言い放ってから、青の青年の言葉を聞く]
……そう言うことになるわね。
名前くらいは知ってた方が良いかしら。
私はシャーロットよ、長ければ好きに呼べば良いわ。
[自ら名乗ってから、促すように周囲の青年達を見る]
[男の声はもの柔らかく、淡々としていた。
微かに声音に惑いが含まれていたにせよ、それはこの場では当たり前のことであっただろう。]
そういうことであれば、私も名乗っておきます。
私の名は、ナサニエル。
[――そう、今は。]
ま、そうなるんだろうな。
[共に過ごす、という言葉。
嘆息と共にそれへの肯定の言葉を零し]
ああ……俺は、ハーヴェイ。
[確かな、と。
その言葉は果たして名を問うた少女に届いたか]
……とりあえず、休めるんなら、俺はそうさせてもらう。
妙な疲れが、身体に残ってるんで、ね……。
[左腕を右手で緩く押さえつつ、言って。
燭台を持つ男に寝室の場所を問い、そちらへと*足を向けた*]
ナサニエルと、ハーヴェイね。
[告げられた各人の名を確認するように反芻して。残る赤の青年の名が紡がれるのを待つ]
部屋は後で空いてる場所を借りることにするわ。
[部屋へと向かう茶の青年──ハーヴェイを見やり、意思表示するかの如く言葉を紡ぐ。押さえる左腕に首を傾げたが、呟かれた言葉までは耳に*届かなかった*]
教師 イザベラ が参加しました。
教師 イザベラは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
ん、客人ですか?
[奥の方から『番人』に声だけをかける。
彼の肯定の返事を聞くも、皆が集う場所に向かおうともせず。]
そうですか。一体、幾人がここに集うのでしょうね。
いや、これは問いではないですよ。
答えがもらえないのは、承知しておりますから。
[ギギと床板を踏みならしつつ、城のあちらこちらに
目をやっては手帳に何やら記す。さらに、見ては記す。
ルーティンが如く、その女性は動いている。]
私だって、自分のことすらよくわからないのですから。
貴方……えーと…。
[手帳をぱらぱらとめくり、ああ、と一声あげる。]
『番人』のアーヴァインさんでしたね。
仮に、貴方が最も知っている方だとしても、
そのような貴方ですら、それがすべてなのかれもしれません。
[再び手帳を、先ほど記していた頁まで戻し、
見ては記し、見ては記しの作業に戻る。]
だったら、ここを見て回る方が今は建設的でしょう。
何故だか関心をひかれるのです。この建築物は。
[そう言って、別の場所へ*行ってしまう*。]
クインジーだ
[三者の名乗りに続け、男も口を開いた]
[番人――アーヴァインを見る目は闇]
[離れる者へと投げたのは、眉を顰めた言葉]
怪我の治療くらいしろ
[それ以上は重ねず、男は場を離れる]
[緋が炎に照らされ、燃えるように灯を吸った]
[古い廊下は軋みながらも、男の移動を妨げはしない]
[やがて、かつては立派であっただろうことが見て取れる広間にたどりつく]
[緋の髪をそこに認め、男は僅かな時間、その場に*立ち尽くした*]
私は……
[と一瞬逡巡した後、]
少し、この城の中を見て回ろうと思います。
後ほどまたお会いしましょう。
[丁寧に礼をし、残る者に背を向けた。
表情こそ心許無さを漂わせていたが、エントランスから奥へと進む足取りには迷いはなかった。*]
[白い紙は次第に黒に彩られていく。
広がる空も錆びた門も這う蔦も
透明な泉も深き森も咲き乱れる花も、
全てはモノクロームの世界に埋没していた。]
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