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――そう、やっとお勤めも終わりね。
[小さく呟き…自身に宿る妖精に声をかけた。
頭の中で、怒られないですむ、とは言うモノの、あまり…嬉しそうには聞こえない声]
…まぁ…今更なのよ。
最初っから…ユリアンを見守っていれば良かったんだから。
[その呟きは喧騒へと消える。
向かう先は…広場]
……………………
[明日の夜には祭りは終り日常が帰ってくる…はずである。]
[そうは言っても、祭りの最中に欠けていった
いくつかの日常がはたして戻ってくるかはわからず。]
[青年は小さく溜息をつきつつ、
準備から開放されたので舞台裏を後にする。]
[その手には二つのガラスが交わり合った装飾。
色は黄色と透明で…光を表していた]
…でも、ね。
ユリアンにとっては、良いチャンスだったんじゃない?
ミリィにも、本当の気持ち、言えたんだし…ミリィは聞いてたかは知らないけどね。
家族にも…本音を言える、チャンスなんだし。
[軽く目を細めると、小さく呟き…]
…だって、ユリアンはユリアンだもの。
まぁ、少し…悲しいけど。
……ミハエル様の信用が、無かったんじゃなくて…。
私が………勝手だった、だけ…なんです…。
『――正直に全て話したら。ご主人様は優しいから、行かせてくれないと思ったんです…。』
[――瞳を閉じたまま、ぽつりと、囁くように。]
『ねぇ、ユーリィ』
……なんだよ?
『一つ、聞きたいんだけど』
……なに?
『……逃げられると、思ってる?』
は……?
[相棒の投げた問いはやや唐突で。
知らず、とぼけた声が出た]
[…すれ違う人々は、火を灯したランプを持っていて。
ソレを見ながら広場へとたどり着き…]
…ともかく…王様には言っておいてよね…
仕事させるんなら、ちゃんと聞く耳持ちなさい、って。
[くす、と小さく笑うと…
雪灯籠からランプに灯を移した]
[青年が舞台裏から…屋台に寄って糖分を補給しようとしたところで
ぼんやりと舞台を眺めるユリアンを見つける。]
[非日常により欠けたに地上が戻るかの要…に、なるのだろうか?]
[そのボンヤリした姿は、とてもそうは思えず。]
[青年は甘いグリューワインと、甘さを押さえたグリューワインの2つを用意し
ボンヤリしたユリアンの後に忍びより
甘くない方のマグカップを、その頭へ軽くぶつけるようにおく。]
逃げるって、何から?
『取りあえず、王じゃなくて。
それ以外のイロイロ』
親父以外のイロイロぉ……?
何だよ、それ。
『…………』
[言われた言葉の意味を理解しあぐねて問えば、相棒、処置なし、と言わんばかりにため息をついた]
[俯いたユーディットを見――溜息。]
[寝台から立ち上がれば、ゆっくりと歩み寄って]
[ぽふり。]
[普段より背の低い少女の頭を撫でる。母が自分にそうするように]
……僕は。
自分の事にばかり感けて。君の心情を理解もせず。
悩んでいるだなんて、知らずにいた。
[翠玉の双眸を、ゆっくりと閉じる]
主として、……不甲斐無いと、思った。
君の勝手を怒りに来たのもある、が。
僕の勝手を謝罪に来たのが、第一だ。
それと。
僕は君を、解雇したつもりはない。
君は約束を守ったのに、僕は守っていないのだから。
……んなっ!?
[頭にぶつかる、軽い衝撃。
その衝撃に物思いから我に返り、はっと振り返る]
一体な……アーベル?
[青の瞳をきょとん、とさせつつ。
カップを手にした青年の名を、ややとぼけた声で呼び]
[ランプに火を灯すと、ガラスはその光で辺りを照らす。
黄色の硝子。
透明な硝子。
そして、曇り硝子。
…金と銀の光を出すつもりで]
ぇ?何?
…良いじゃない。
これぐらいの…手間賃は。
[ポツリと零すと、その視界にユリアンとアーベルの姿が入り…軽く手を振った]
[飲み終わった紙のカップは捨てて、
子供は砂糖の花をもう一瓶、買った。
それから、広場へは向かわず、
村の外れの方へと歩き出す。
人波に飲まれるように、子供は、
丘へと向かう。]
―村の外れの丘―
ノーラさん?
[白い月の冷たい光が、
白い雪を照らしてる。
村の中はあかりでたくさん。
だけれど子供は、
その白の方が好きだった。]
王様の馬を集めても。
兵隊をたくさん集めても。
全てが綺麗に元に戻ることは有り得ないのかもしれない。
――それなら、せめて。
終わるまで、全てを見届けようと。
[覇気の抜けた姿に、もう1つ溜息]
……準備は済んだの…か?
[結界をこわす、妖精王を引き摺り出す…
…………そしてミリィを迎えに行く。]
……ミハエルに先をこされているみたいだが。
[と、先にユーディットに会いにいった少年の事を持ち出す。]
[ホットチョコレートの入ったマグカップを両手で包んで
そっと自室の窓を覗き込めば、ガラスが白く幕を作った。
それに、さほど気にした様子を見せないまま
窓の外から見える、準備作業の進められる広場をぼんやり眺めて]
[問いに、一つ瞬いて。
それから、ああ、と頷く]
やらなきゃならない事は、全部片付けた。
後は、時間を待つだけだな。
[先をこされて、といわれれば、ただ、苦笑するしかなく]
ま、それは……仕方ねぇだろ。
[ため息混じりに言った後、手を振るイレーナに、こちらも手を振り返し]
……あの灯りを見るとさ?
もうすぐ終わっちゃうんだなーっていっつも思うんだよね。
まぁ、村中が灯ると…すっごく綺麗には違いなんだけどさ。
少しだけ寂しくなるの。
[小さく笑みを浮かべたまま
――誰に投げかけるでも無く、ぽつりと呟いて]
―――――。
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