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人から生まれて、人に憑くモノ―――『憑魔』。
ソレが、“犯人”ですよ。
…普通、誰が『憑魔』かなんて判らない。
──否定は、しませんけど。
[ショウの言葉に、短く、途切れ途切れに言葉を返す。
何で、どうして。
思いも掛けない相手から、向けられる感情に混乱の色を浮べ]
んなの、知らないッスよ
…俺が来た時にはあの人は倒れてた。
…ッ、俺じゃない! 俺は、殺してない!!
[歩み寄りながら、強く投げられる問いに。
答えを返す言葉も、次第に荒く変わる。
胸倉に伸ばされる腕は、避けずに──避けられずに]
うん、だからここにきたんでしょ。
でもダメ。
[牽制するかのように。
生徒会室から持ち出してきた果物ナイフを取り出して]
ヨウコはここをとおしたくないの。
だからとおしてあげない。
[再びニコリと笑みを浮かべて]
音色がたすけてくれたから。
こんどは音色をたすけたいんだって。
それが、わたしの、のぞみ。
[まだカバーの付いたナイフを握ったまま。
クスクスと笑う]
逢いに、行くよ……。
[呟いた瞬間、阻む壁の存在につき当たり。]
……ちょっと。
死んでもまだここに閉じ込められるの?
[不満げに軽く口を尖らせ。]
よく言う。それを言うあんたは先輩であって先輩じゃないんじゃないの
先輩の口でこれ以上喋r……!
[投擲されたガラス片をなんとか避けようとする。避け切れなかった脇腹に朱が走る。痛みを歯を噛み締めて押さえ込むと]
危ない……なぁ!!
[反撃の一矢]
俺は通りたいから、通してもらわないと困るんだけど?
[クスクスと、幼子のように笑うヨウコとは対照的に。
瞳は静かで、口調は冷静で]
助けてくれたもののために何かしたいんなら、同じなんだけどね……。
[一つ、息を吐く。
制御しなければ、と。
それができなければ、自分の風がどこまで吹き荒れるのか。
正直、それは検討もつかなくて]
[途中で給湯室に立ち寄り、水を一杯だけ飲んでから再び外に向けて歩み出す。
先程此処に来る前に、言葉を交わした少女を思い出す。彼女はきちんと約束を果たしてくれるだろうか。]
[そう考えていた所為なのかは分からない。気付けば視線の先には桜が咲き誇る。
此処でクラスメイトの少女が死んだことを洋亮は未だ知らない。ただ感情のぶつかりあう声が聞こえた。]
―桜―
……いいよね。
ミヅキ先輩はいいよね。
[ふとその口調が変わった]
好きなように動いて。
自由に過ごして。
それでも傍に心配してくれる人がいつもいて。
羨ましい。
[軽く伏せられた目。
視線を外すほどではないが、表情が曇る]
……。
[僅かに、言葉に引っ掛かりを覚える]
オレも、知らない。
夢じゃないって思うけど、現実だって証拠もない。
違うって、そう思いたい、でも―――
何ひとつ確かなモンなんてなくって、
………それでも、
やんなくちゃいけない事はひとつで、
だからっ、
[言っている事は支離滅裂で、
ただの八つ当たりなんじゃないかと、何処かで思う。
それでも、手は止まらなかった。
左手で掴んだ胸倉を引き寄せてから、1度離す。
間を与えず、右手で拳を作り、殴りかかった。]
流石に物わかりが良い。
助かるよ。
アンタは本当に手の掛からない後輩だったからね。
[再び、矢を床に捨てた。
回避動作を取った水月海に向けて二歩、
大きく跳躍して距離を詰める。]
[放たれた矢は、振り上げた前腕を深々と射貫き、
矢の中程まで刺さって止まった。]
[走り幅跳びの要領で、三歩目に大きく跳び
床からすくいあげるようにして、
射撃動作を終えたウミの顎を目掛けて蹴り上げた。]
でも、ヨウコには。
ヨウコの見ていた人たちは皆、別の方を見ていた。
仕事や勉強、或いは他の誰かを。
そこにはヨウコの居られる場所は無かったんだ。
[相手の言葉も聞こえていない様子で]
それでも良かったんだ。
良いと思ってたんだ。
でも、それは間違ってるって。
手を伸ばせば届くのにって。
[騙し絵のように、またクルリと表情が変わる。
フワリと微笑んで]
だってそうでしょう。
てをのばさなかったらとどくものもとどかないもの。
[語られる言葉を、静かに聞いていたが、やがて小さく息を吐き]
……そうだね。
手を伸ばさなければ、何も得られない。
[だけど、と。
そこで一度、言葉を切って]
そのために、君は。
その力を得た……?
……それで、本当に。
望むものが掴めると、思うの?
[一瞬だけ傷ついたような表情が掠める。
だがすぐにキョトンとした顔になって首を傾げて]
ヨウコはてをのばしたよ。
だから、わたしは、それをかなえるの。
おもうかどうかじゃなくて。
つかむんでしょう?
そのためのちからでしょう?
[ちがう?と問いかける声は純粋にさえ聞こえるもの]
[弓道場から校舎への通り道からは桜の木は見えない。見えたとしても、安心こそすれ心配はしなかったろう。真っすぐに校舎に駆け込み、階段へ向かおうとして、風の音に足を止めた]
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